敷金償却とは何か?会計上の処理方法まで詳しく解説
『敷金償却という言葉が分かりづらい』
『敷引契約を行ったら、どうやって会計処理をすればいいんだろう』
『そもそも敷引契約って無効にならないの?』
こんなお悩みはありませんか?
不動産の専門用語は、条件や場所によって異なった使い方をされるものもあり混乱を生んでしまいがちです。
特に償却は保証金とも呼ばれます。この保証金という言葉実は関西では『敷金』と同列で扱われているとご存知ですか?
結論から言うと、敷金償却は敷金の一部を原状回復費用として償却したお金や、敷引契約で償却したお金を指します。この敷金償却という言葉、様々な用語が入り乱れ混乱してしまいますよね。
そこで、今回の記事では敷金償却とはなにかについて詳しくお伝えしていきます。
この記事を読むと、会計上の処理方法や相場まで分かるので、ぜひ最後までご覧ください。
敷金償却とは何か
ではまず初めに敷金償却とは何かについてお伝えしていきます。
結論から言うと、入居者から最初に支払ってもらう敷金とは全く別の性質を持つものです。
敷金償却については、業界用語であり、言葉の背景を知らないと理解が追いつかないため、ここでは、その背景知識からお伝えします。
敷金とは
第一に、一般によく知られている敷金とは、入居者から預かる一時金を指し、退去後の原状回復費用等として一部が支払われたのち、支払った人に残りの全額が返還されます。
例えば、入居後に家賃滞納を起こしてしまった場合には、この敷金から充当されます。
借りている部屋に対して通常の使用以上の損耗を与えた場合に、借主の負担としてこの敷金からまず充当されていきます。
当然預かった一時金という法的性質を持つため、充当され残ったお金は借主に返還しなければならないと考えなければなりません。
保証金とは
保証金とは、敷金の名称が変わったもので、主に九州の一部や関西地方の商習慣として根付いた言葉です。
敷金や礼金といったものに追加して支払うものではなく、あくまで『敷金的』に使用するのが通例です。
ただし、この保証金という言葉には二通りの意味がある点に注意が必要です。
1点目は、敷金と同じ意味で使われる場合。
2点目は、償却されたお金を保証金と呼ぶ場合です。
後者の場合は、敷金償却と同じ意味で使われています。
この両方の意味が存在しているため、一見どちらの意味で使われているかが分かりづらくなってしまうんですね。
見分け方としては、入居の際に使われているのか、敷金償却後の話をしているのかの時系列でみることが重要ですよ。
礼金とは
上二つと全く異なった性質を持つのが礼金です。
礼金とは純粋な不動産オーナーの収入としてカウントされる性質をもったお金です。
これは住宅が不足していた時代の名残のようなもので、今ではあまり見かけなくなってきています。
一度受け取ったら返還しなくて良いお金です。
敷金償却と敷金の明確な違いは?
さて、では敷金償却と敷金の明確な違いをお伝えしていきます。
敷金や保証金の一部を敷引契約や借主の責任のある原状回復費用として償却したお金を指します。
大まかな分類で言うと、敷金の一部として捉えることができるということですね。
では、この両者の違いとは何かというと、以下の通りです。
- 敷金は借主側から預け入れられる一時金
- 敷金償却は貸主側が主に原状回復費用として『使用』するお金
※後ほど解説する敷引契約を通して貸主に入る敷金の一部も償却金です。
まとめると、借主側の一時金(返還金も含まれる)か、貸主側に入るお金かという明確な違いがあります。
気になる敷金償却の相場について
償却金と敷金の関係性について詳しく分かったところで、大家さんにとって気になる相場について詳しくお伝えしていきます。
大前提として、大家さん側にとって有利になる償却金の割合を高めすぎてしまうと、裁判沙汰になってしまうという点は覚えておきましょう。
敷金の相場は?
まず相場ですが、経営する不動産の種類によって異なってきます。
一般的な賃貸アパートの場合、1ヶ月から3ヶ月が相場です。
この相場は良く耳にするものですが、最近では礼金と供にゼロの『ゼロゼロ物件』が増えてきています。
また、テナントになると期間が延長され、およそ10ヶ月程度となることが多いです。
場所や条件によってまちまちですが、ビジネスに使われる場所は概ね礼金等を合わせて1年分の一時金が相場です。
敷金償却の割合はどれくらいが相場なの?
次に敷金償却にかかる割合はどれくらいが相場になるのかをお伝えします。
敷金償却の特約が無効になるラインが、2.5ヶ月分から3ヶ月分程度です。
敷金償却の特約とは賃貸契約を結ぶ際に、提示できる内容であらかじめ敷金の一部を償却する前提で借りてもらうことができます。
良くトラブルの元になりますが、高額過ぎでなければ有効な契約となります。
償却金の相場については、この特約の相場を知るとわかりやすく、大体1.5ヶ月分が償却されることが多いです。
通常の賃貸契約であれば、およそ50%が償却される計算になりますね。
敷金の償却にかかる税務周りを教えて欲しい
敷金の償却は、償却が発生する場合には課税対象となり、借主に返還する場合には用途によって異なりますが基本的に税金は発生しません。
不動産投資において、会計知識は節税を考える上でも重要であり、どのような会計処理をしなければいけないのか一定の知識は必須です。
そこで、この項目では、敷金の償却にかかる税務周りを解説し、最後にモデルケースを用いてイメージをより強固にしていきます。
敷金を返却するタイミングは?
敷金を返却するタイミングは、入居者の退去後1ヶ月程度が目安です。
契約書に明記している大家さんもいますが、退去後部屋の状態の内見を経て借主原因における修繕箇所の修理などを行った後に残った残金を敷金として返却すれば大丈夫です。
修繕費用が敷金で預かっている額よりも高くついてしまった場合には、元入居者に対して請求することも可能です。
入居者からの問い合わせとして、引越し先の初期費用として使用したいので早く返還して欲しいという事例があります。
できれば力になってあげたいと考える大家さんもいらっしゃるかと思いますが、まずは修繕に必要な額をきちんと見積もり、償却することに専念しましょう。
償却金の会計処理はどうなるの?
さて、続いては償却金の会計処理についてです。
仕訳は以下のように分類できます。
- 敷金として全額返還する場合⇒預り金、現金又は預金
- 敷金償却として使用する場合⇒売上
- 年度毎に償却していく場合⇒年度毎に売上として計上する
仕訳に関しての考え方は、大家さん側が自分のものとして使用できるかどうかが仕訳のポイントです。
償却金に関しては、大家さん側が建物の修繕などに自由に使えるため売上となっているんですね。
逆に返還される予定の敷金は『一時的な預かり金』として、使用用途が限定されるため、課税対象ではない預り金や現金又は預金に仕訳されます。
敷金償却を売上として計上するタイミングについて
償却金を売上として計上するタイミングは以下の通りです。
- 賃貸契約時に内容によって償却金が確定する(特約)
- 契約によって償却金が確定する日付が到来したとき(特約)
- 賃貸契約終了時に償却金が確定する(通常)
前者二つに関しては、特約によって締結される契約であり、両者の合意があれば時期が到来するだけで償却額が確定します。
最後は敷金がある場合の通常の賃貸契約の類型であり、終了時敷金から原状回復費用等を差し引くことで償却が確定します。
敷金償却の消費税は?
返還される敷金は売上として計上しないため、消費税はかかりません。
一方で問題となってくるのが敷金の償却です。
敷金の償却に関しては、繰り返しになりますが売上として計上します。
そのため、一見消費税が問題になってきそうですが、アパート経営については非課税になるんですね。
事業用店舗の償却金は消費税の課税対象となります。
入居者退去時のモデルケースを考えて見よう!
では最終的に入居者退去時の敷金償却のモデルケースを考えてみましょう。
モデルケースを二通り用いて概算を行います。
まず1つ目のモデルケースはアパートの賃貸契約を敷金5万円で行った場合です。
- 契約締結時⇒5万円(預り金)
- 入居者退去時(償却金3万円)⇒3万円(売上)
仕訳の内容が変更になっていますね。
居住用の賃貸契約のため消費税は課税されない点に注意が必要です。
次に店舗用で敷金償却の特約を用いているところはどうでしょうか。
敷金20万円で、10万円の敷金償却を行います。
- 契約締結時⇒11万円(売上)
この契約類型では、契約締結時に償却金が確定するためすぐに売上に計上します。
さらに店舗用の賃貸契約のため消費税を加味して計上を行ってくださいね。
敷金償却契約をあらかじめ結ぶことは可能?
結論からお話すると、あらかじめ敷金償却に関する特約を入居者と交すことは可能です。
ただし、前の項目でお伝えしたように額によっては無効になってしまうものも存在するため注意が必要です。
また、消費者にとって不利となってしまうため改正民法の規制が2020年から入っています。
これらの点から今後は減少が予測される特約であることに留意してください。
そもそも敷引契約って何
敷金償却特約は敷引契約と呼ばれます。
敷引契約とは、前もって償却金の割合を決めておくものを指し、賃貸契約を結ぶ際に、オーナーと入居者との間で結ばれます。
敷引契約が無効になる条件とは何か
では敷引が無効になってしまう条件にはどのようなものが含まれているのでしょうか。
上記でお伝えした判決文を元に、裁判所から無効判決を受ける要件を紹介していきます。
書面によりお互いの合意が得られているかどうか
まず大前提として、契約の法律行為が成り立っていることが重要です。
敷金償却金に関する契約は、特約と呼ばれ書類を交わして行う必要があります。
もし、口頭で行ったと言っても、裁判所からすれば契約書に書いていない事項は無効と判断する他ありません。
余談ではありますが、敷引契約に関しては退去後に入居している方が思い出して、問題に発生するケースが良くあるため、必ず締結時には念を押して伝えておく、できれば録音までしておくと裁判に発展した際、強力な証拠となりますよ。※録音は同意の元に行って下さい。
まず高額になりすぎていないかどうか
次に繰り返しお伝えしていますが、償却金が高額になりすぎていないかも重要なポイントです。
有効ラインは家賃2ヶ月分から3ヶ月分となります。
仮に契約が無効になった場合には、不当利得となってしまい、場合によっては全額返還となってしまうパターンもありますよ。
このラインについては、後ほど解説する償却金だけでなく、礼金や更新料の有無までが加味される点に注意しましょう。
礼金・更新料の有無について
礼金や更新料は敷金償却金の一部として加味されます。
判決の全文を読んでみると、明確に更新料や礼金が加味されて、敷金償却額が高額でないと言及されています。
もし仮に、礼金として家賃の2ヶ月分などを前もって徴収しているとなると、1ヶ月分程度が償却金の限度となってしまうため注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、敷金償却について言葉の定義をその背景知識から詳しくお伝えしてきました。
また、相場観や会計上の処理方法、そして最新の敷金償却特約の動向まで解説しましたが、償却金がどれくらいになるのか、どれくらい入居者に返還するのかは非常にシビアに見られることになるでしょう。
適法に処理を進めれば大家さんにとって大きな味方になるのも事実なので周辺知識を整理して知識をつけてくださいね。
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※当コラムはあくまで個人的な見解に基づくもので、内容についてはご利用者様自身の責任においてご判断ください。